第246章

 身を起こそうと藻掻き、先ほど起こった出来事を思い出しては、心臓が張り裂けそうな痛みに襲われる。

 その時、外で物音を聞きつけた者が、足早に入ってきた。

「前田さん、お目覚めですか?」

 前田南が顔を上げると、そこにいたのは大谷森だった。

 彼女は淡く微笑む。

「四年ぶりね。まだ彼のそばにいるなんて、本当に何も変わらないのね」

「琛様は私にとって、知遇の恩がある方です。当然、おそばにおりますとも。前田さん、今のお加減はいかがですか? 医師をお呼びして診察してもらいましょうか?」大谷森は柔和な口調で言った。

 前田南は手を振って断る。

「いいえ、もうずっと良くなったわ。警察署へ...

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